自閉症児とのキャンプの思い出①
これは大学生の時の話です。
私がかつて通っていた大学には、自閉症について理解し、自閉症の人たちと一緒に活動することで、自閉症の人々に療育を行うことを目的としたサークルがありました。
日曜日に月1回、自閉症児、自閉症の大人、その兄弟たちとお遊戯やレクリエーション、工作などを行って集団生活の基礎や手先や身体の使い方を教えたり、コミュニケーションの場を設けたり、休日を有意義に過ごす事で達成感を感じてもらったりする活動がありました。
活動に参加しようと決めた理由
私も大学に入ったら何らかのサークルに入ろうと思って学内のサークルの貼り紙を見たり、サークルの説明会に行き、その中でこの自閉症の人たちと関わるサークルを知って、正式に入部することはできませんでしたが、とりあえずその月1の活動に参加することにしました。
正式に入部が出来なかったのは、高校卒業まで家族や親戚以外の人間とまともに会話をしたことがなく、大学生になって無理やりしゃべり始めたことと、小学校から高校までの喋れない生活の中で同級生に気持ち悪がられてきた経験から、年の近い学生たちに対して強いトラウマがあったからです。
それでも、大学入学当初はまだ自分が話せなかったのは場面緘黙症という病気だったからだという事も知らず、そもそも場面緘黙症という言葉すら知らず、私自身も自分がしゃべれないのは自分の気持ちの問題だと思い込んでおり、大学生の間に生まれ変わりたいと思っていました。
生まれ変わるために興味のあるサークルに入りたい、という気持ちもあり、どうしても入部まではできませんでしたが、とりあえず月1の活動には行ってみて、自閉症のこと関わってみたいと思って参加を決めました。
また、何故その活動に興味を持ったのかについてですが、私は当時場面緘黙症という病名こそ知らなかったものの「周りのみんなは他人と普通に会話ができているのに私だけ話せないのは何か理由があるに違いない」と思っていたからです。
私はずっと通常学級で勉強してきましたが、「会話のできない私は本当はここにいるべきではなく、特別支援学級に行くべきなのではないか」と思う時がたくさんありました。
そして、サークルの活動に参加するまで自閉症が何なのかもちゃんとは理解していなくて、自閉という感じだけを見て「自分を閉ざしてしまう障害なのか。家族以外に自分を出すことが出来ない私を指しているな」と感じ、「もしかしたら私は自閉症なのではないか」と考えました。
努力して喋れない自分から生まれ変わりたいと思いつつ、自分が周りの子たちのように話せない理由を突き止めたいと思っており、この活動に参加することで何らかのヒントが得られるのではないかというのが正直な理由でした。
大学生が沢山集まる場所ということで、やっぱり凄まじく緊張していました。活動の前にまず学生だけ集まって、活動の流れや自閉症とは何なのか、自閉症の方との接し方などの説明を2年生以上の先輩が行いました。その説明の時間のテンションがとても高く、大学生特有のノリで進められており、それが私にとっては非常に心臓に悪かったというか、居心地のいいものではなかったのですが、先輩たちの説明は堅苦しさは全くなく、自閉症を全く知らない人でもわかりやすく障害の特徴や接し方を説明していて、活動中に気を付けることはとてもよく分かりました。
これを読んでくださっている人の中にも、自閉症は聞いたことがあるけどどのような障害なのか分からない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明したいと思います。
自閉症って何?
自閉症とは主に対人関係が苦手・強いこだわりがあるという特徴があり、この特徴によって日常生活に支障が出ている状態を言います。
典型的な自閉症は言葉の発達に遅れがあり、言葉でのコミュニケーションが難しいです。
また、言葉の発達に遅れはないけれども、自閉症の特性がある場合を明日ベルガー症候群と言います。
私が参加したサークルにやってくる自閉症の方々はほとんど典型的な自閉症の人たちでした。
行動の特徴の例としては、
・視線が合わない
・表情が乏しい、または不自然
・オウム返しをする
・名前を呼んでも反応がない
・独り言が多い
・触られることを極端に嫌がる
などがあります。
集団行動に適応できなかったり、こだわりに反したことが起こるとパニックになってしまうことがあり、周囲からわがままなだけだとか、家族が甘やかした結果そうなってしまったという誤解をされることもあるようですがそんなことはなく、生まれつきの脳の機能的な障害で、本人や周囲のせいでは決してないです。
接し方の例ですが、例えばオウム返しがある人であれば、
「トイレに行く?」
と聞いても
「トイレに行く?」
とオウム返しが帰ってきて、トイレに行きたいか聞いているのに行きたいかどうかが分からないことがあります。
そのような時には
「トイレに行きたいときは右手、行きたくないときは左手をタッチしてね」
と言って両手をだすと、どちらかを選んで意思表示ができる時があります。
また、集団で行動している時にみんなで座ることがありますが、単に
「座って」
と言ってもどのようにして座っていいのかわからないことがあるので
「前を向いて座ろう」
と言ったり、何か物を置いてほしい時に
「そこに置いて」
と言ってもどこに置けばいいか分からないことがあるので
「机の上に置いてね」
と言ったり、指示をする際にはあいまいな言い方ではなく具体的に示すことが大切だったり、コミュニケーションを工夫することでスムーズに意思疎通が出来るようになります。
活動に参加してみて
説明を受けてみたものの、それまで実際に自閉症の人と接してみないとどんな障害なのかピンときませんでした。
説明のあとしばらく上級生たちが活動の準備をして、その後みんなで一緒に踊るお遊戯の練習や指遊びの練習を行いました。
お遊戯や指遊びなんて、小学校の低学年以来にやったので、とても懐かしい気持ちになりました。
で、肝心の自分が会話ができないのは自閉症か否かについてですが、接してみて私とは全く異なる症状の人が多かったので、私は自閉症ではないな、ということが分かりました。
でも、この活動にやりがいや楽しさを見出していたので、しばらくこの月1の活動に参加し、人と関わるきっかけにしたいと思うようになりました。
続く。。。