休む報告ができなかった話
これは私が高校2年生の時の話です。
私は家族で東京へ旅行することになっていました。
この旅行が何泊何日だったかまでは覚えていないのですが、旅行の1週間前には担任の先生に
「この日は用事があって学校を休みます」
と言わなければなりませんでした。
母にも早めに担任の先生に伝えるように言われていました。
しかし、私が先生に休む報告をしたのは旅行の前日になってからでした。
なぜなら、やはり自分から担任の先生に話しかけて用件を伝える事がどうしてもできなかったからでした。
私が高校生の時はまだ、私は自分が場面緘黙症だということを知らず、私が知らなかったので担任の先生も知りませんでした。
私が病気によって話せないという認識は私にも先生にもなくて、私は私で
「何とか人並みに話さなければ」
と思いながらもどうしても言葉を出すことができなかったし、担任の先生もそんな私の会話能力の低さを結構注意していました。
日頃から注意されているならさっさと休みの報告をすればいいのですが、そうもいかなかったのが場面緘黙症でした。
注意してくる先生は将来私がそのままでは困るだろうと思って、今のうちに直してほしくて注意してくれていたとは頭では理解できていましたが、私自身、病気とは知らなかったとはいえ好きで会話ができなくなっているわけじゃないのに、という気持ちもあったり、自分でも会話の出来なさを自覚していたからこそ注意されてしまうことが怖くて怖くて、とても自分からは先生に話しかけて用件を伝える事ができませんでした。
当時は母も私が自分の力で話せるようになることを望んでいたようだったのと、当時は私は自分が学校で話せないことを家で家族に話すことに大きな抵抗があって、家では普通に会話ができていたからこそ学校での体たらくを見せたくなくて、母に「先生には言ったの?」と聞かれて「言ったよ!」と嘘をついてしまっていました。
そして、旅行の前日、先生に勇気を振り絞って休みを伝えたところ、
「前日になって休みを伝えるなんて急すぎる」
とまたしても注意されてしまいました。
おまけに
「お母さんは今日伝えるように言ったのか?」
と尋ねてきました。
私は思わず首を縦に振ってしまいました。
自分が親や先生に怒られるのが本当に怖いと思っていた私はまたしても嘘をついてしまいました。
しかし、そんな嘘をついたのが非常にまずかったです。
先生から母親に電話が行ってしまいました。
こうして、母親には私が先生に伝えていなかったことがばれて、先生には母親が前々から先生に休みの報告をするように言っていたことが知れてしまって、両方からものすごく怒られてしまいました。
旅行は旅行で楽しかったと言えば楽しかったけれど、前日にこっぴどく叱られてしまって、自分が早く先生に言えなかったことと二人に嘘をついてしまったことで自分はなんて最低な人間なんだと自責の念に襲われ、せっかくの旅行も思いっきり楽しむという感じではなかった記憶があります。
今となってはやはり当時から私や先生も場面緘黙症を把握していれば相談もしやすかったし、先生ももっと違った対応をしてくれた可能性があるし、私も素直に言うのが難しいと母に言えて、嘘をつく発想にはならなかったと思います。
嘘をついたのは本当に悪かったとは思うけど、病気を知っていれば話せない自分が悪いんだと必要以上に思うこともなくて、母や先生と一緒に解決方法を考えられたのではないかな、と思っています。