誰だお前
高校と言うと、小学校から中学校まで一緒だった同級生達とは離れることが多い。
入学した頃なんて、ほとんど新しく知る人達ばかりだろう。
これは、そんな高校生活の初めぐらいの話だ。
私は、公立高校に落ちたため、私立の高校に行くことになったが、私立は中学校の校区にある高校と、中学校校区から離れた所にある高校の2つの高校に受かっていたため、2つの高校から1つを選ばなければならなかった。
私は、中学時代話せなかったことにより、いじめや陰口をされきもがられていたため、中学校時代の私を知る人が少ない高校に行きたかった。
だから、中学校校区から離れた学校を選んだ。
しかし、知らない人が多い環境を選んで、なんとか話をできるようになりたいと思っていたが、私の場面緘黙症は環境が変わったくらいでは治らず、やはりそれまで通り話せない私のままだった。
そんなある日、休み時間に教室でひとり本を読んでいたら、クラスメイトのサッカー部の男子と遊びに来ていた違う学科のサッカー部の男子が教室ではしゃいでいた。
そして、はしゃいでいた違う学科のサッカー部の男子が私の机にぶつかってきたのである。
そいつは、謝るわけでもなく
「誰?」
と言って私の名札を見てきた。
いや、誰?じゃねぇ。謝れや。
この時点でものすごく感じが悪いが、名札を見た瞬間、
「うわ!この人がなおかよ!」
と騒ぎだしたのである。
いや、誰だお前。
私はそいつのことを一切知らないのに、そいつは私の名前を知っていた。
私は、それが何故なのかすぐにわかった。
私と同じ中学で、サッカーやってた奴が、私と同じ高校の違う学科に行ったことは知っていた。
その、同じ中学の奴がサッカー部に私の話をしてたんだろう。
中学時代、喋れない私を見てニヤニヤと気色の悪い笑顔を浮かべていたような男だ。
きっとろくでもない話をしたに違いない。
頭に来たのでサッカー部達を睨みつけていたら、いそいそと離れていった。
そんな感じで、学校で口がきけない私はやっぱり周りと違う行動のために無駄に目立ってしまっていたようで、向こうが一方的に私のことを知っていて、私からしたら
「お前誰やねん」
なことが結構あった。
目立ちたくない私にとっては非常にしんどいことだった。