自習
私は、学校の自習の時間が嫌いだった。
大体、自習の時間は、皆喜ぶ。
何故なら先生がいないので、自由に席を移動して友達同士お喋りをする時間になるからだ。
何故私が自習の時間が嫌いだったのかというと、私はクラスで孤立していることが多かったため、席を移動することも、どの友達グループにも混ざることができずに1人でひたすら勉強するふりをしなければならなかったからだ。
何故ふりなのかというと、私にとってクラスメイト達の話し声は恐怖の対象であり、その恐怖の音声を耳にしながら勉強したところで頭には内容があまり入ってこなかったからだ。
高校3年の頃は、授業もだんだん大学入試に向けての試験勉強のための自習時間が増えており、これが私にとっては本当に苦痛だった。
皆が自習中に話している内容は恐らく、入試に出そうな所の教え合いだったのだろうが、私にとっては、クラスメイトの声そのものがストレスだった。
あるとき、高校のときの担任の先生が、高3の夏あたりに、大学入試のために土曜日1日自習しにクラス全員学校に来いと言ったことがあった。
私は、すぐに無理だと思った。
もちろん、1日勉強することが無理なのではなく、1日クラスメイトの話し声の中1人でいることが耐えられないと思ったのだ。
でも、私の担任は非常に厳しい先生で、こんな理由で自習に行かないなんて絶対に許してくれないだろうと思っていた。
悩んだ私は、母に、この自習について相談した。
すると、
「そんなにしんどいんだったら先生に言って自習休ませてもらった方がいいんじゃない?」
と言ってくれた。
あの怖い担任が私のお願いをきいてくれるのか、そもそも、担任に話をするの自体がものすごく緊張するのだが...とぐるぐる考えたが、やっぱり皆のワイワイに私は耐えられないと思ったので、担任に言ってみることにした。
緊張しまくって死にかけながらも、なんとか、皆が話している中1人で自習をするのが苦痛だということ、自習の日、自宅でしっかり学習するので、そうさせて欲しいということをたどたどしく話したなぁ。
なんか、怖い担任に、自分からクラスにあまり馴染めていないことを話すのは非常に恥ずかしかった。
話しているときの私の顔はまぁ酷いものだっただろう。
すると、意外なことに私は自習に参加しなくてもいいことになった。
拍子抜けしたが、とてつもなく安堵した。
後日、母と担任が話をする機会があり、私が自習を休んだことについて話したらしい。
そのとき担任は、
「なおさんは、あのときすごく丁寧に言葉を選んで話してくれました」
と言ってくれていたそうだ。
あの先生がそんなふうに言ってくれるなんて意外すぎて開いた口が塞がらなかったが、普段あまり生徒を褒めない冷たげな先生にそう言ってもらえて少し嬉しかった。
私が思っているより、もしかしたら私は喋れてるのかもしれない、と思った。