話せる子でも
私は、放課後等デイサービスで、発達障害や不登校の子どもたちを支援する仕事をしている。
そこで、印象に残ったことがあった。
私の働いている放課後等デイサービスでは、その日に来た子どもたちみんなで取り組む、ソーシャルスキルトレーニングの時間がある。
それで、その日は、アイスブレイクとして自己紹介ゲームをしました。
今回はみんなの前で学校と名前、そして好きな教科と苦手な教科を言い、終わったら誰かに握手をしに行って、握手をされた人が次にやる、という流れで行った。
それで、ある、いつもとっても元気に皆と仲良くおしゃべりをしている男の子が握手をされ、自己紹介をした。
すると、その男の子は、皆に注目されてすぐに、顔を真っ赤にしてうつむいてしまったのである。
なかなか話ができない様子の彼に、皆が優しく
「名前を言えばいいんだよ」
とか、
「好きな教科は?」
とかきいて、なんとか小さな声で答えていたが、泣きだしそうな顔をしていた。
無事に自己紹介が終わり、次の子に握手をしに行く彼を見て、
「本当によく頑張ったね」
と思ったと同時に、昔、自分が皆の前で話すときに毎回あんな感じになっていたな、ということを思い出していた。
そして、それ以上に、いつもは元気におしゃべりができている彼が、発表の場が泣きだしそうなくらいに苦手なのだということに衝撃を受けていた。
私は、発表の場に限らず、人がいる前で話すことができなかった。
私のように、普段からあまり話をしていない子が発表の場面で言葉を詰まらせてしまうことはあると思う。
でも、今回のその子は、普段、友達や先生とは元気におしゃべりができる子だから、そんな子が発表の場面がすごく苦手に感じることもあるんだな、というのは私にとっては発見だった。
私は、母に、
「あんたは場面緘黙症で話せないから、自分は特別発表とか、プレゼンとかが苦手に感じているかもしれないけど、緘黙じゃない人だって、人前で話すのは苦手なこともあるんだよ」
と言われていたが、正直、意味がわからなかった。
でも、こうして、普段話せている子が発表で泣きそうになっていたのを目の当たりにして、ようやく母の言っていたことの意味が理解できた。
こういう発見があるところが、この仕事の面白い所だと思っている。